“~前に”
過去のことを話したり書いたりするときに、「その出来事がどれくらい前か」を表現したいときに、”ago” や “before” という単語が思い浮かぶのではないかと思います。
どちらも日本語で「~前に」という風な表現ができます。
今回は「~前に」という表現に着目して、この2つの単語について、使い方や意味を中心に掘り下げていきたいと思います。
ago と before の違い
まず ago と before の違いについて説明し、 その後で ago と before それぞれの意味について例文を交えながら述べていきたいと思います。
ago と before の違いは、時間の起点を軸に考えると整理しやすいです。
こちらをご覧ください。
[box class=”box29″ title=”時間の起点|’ago’ vs ‘before'”]
● ago
・今から~(時間/年など)前
● before
・どれくらい前かわからないけど「漠然と以前」
・過去のある時点から~(時間/年など)前
[/box]
agoの意味
ago は、今からどれくらい前に起きたことか を表すために用いられる言葉です。
重要なのは次の2点です。
- 時間の起点が 今 (now) である。
- ある 時点 を指す。※期間ではない。
まず時間の起点が「今」であるというのは、この後出てくる “before” との違いを掴むために重要な点となります。
次に、期間ではなく過去のある「時点」を指すということも重要です。
以上のことから、ago は「今から~前のある時点に、●●があった」というように、過去のある時点に何かが起きたということを単純に述べるために使うので、過去時制 (past tense) の文で使用するのが一般的です。
以下、例です。
This castle was built three hundred years ago.
このお城は300年前に建てられた。
このように、ホテルが「建てられた(完成した)」という過去のある一時点が表されます。また、その過去とは「今から300年前である 」ということになります。
ちなみに、「これまで(過去)~の間」という風に期間を表したいときには、for が使われます。
This castle has stood for three hundred years.
このお城は300年もの間建っている。
またこのように期間を表す場合、①過去から現在まで続いている事柄については現在完了形(present perfect)が、②過去のある期間を表す場合には過去完了形(past perfect)で述べられるのが通常です。
before の意味
before も日本語では「~前」という意味になると思いますが、ago とはどのように違うのでしょうか。
※ago との違いを説明する前に1点ご注意ください。
ここでの before は「~の前に」という意味の前置詞としての before ではなく、「~前」という意味の副詞(adverb)としての before について述べています。
[box class=”box29″ title=”before/前置詞と副詞”]
● 前置詞の before(”何の前か”を指定する)
before ten o’clock 「10時前に」
↓今回の話はこちらです
● 副詞の before(”どれくらい前か”を指定する)
a few days before「数日前に」
[/box]
それでは説明させてください。
before と ago の違いについてですが、
まず、before は ago とは違い「どれくらい前なのか」という点について、よりあいまいに表現することができます。
例を見てみましょう。
I think I’ve seen this drama before.
このドラマ、前に見たことあるなあ。
このように before は ago とは違い、どれくらい前かを表す時間を必ずしも述べる必要がなく、「どれくらいかはわからないけど、前に」という風に漠然とした表現ができます。
次に、時間の起点についてです。
ago の時間の起点は常に「今」です。「今から○○前」という意味は一定です。
これに対して before の時間の起点は「今」の場合と「過去」の場合があります。
まず、起点が「今」の例は、先ほど紹介した「どれくらいかわからないけど、前に」というのが該当します。普通、起点が「今」でどれくらい前なのか明確な場合は ago を使います。
次に、起点が「過去」になる場合の例を見てみましょう。
When I went there, the game had ended an hour before.
そこに来た時、試合はすでに1時間前に終わっていた。
この例文の before の時間の起点は「そこに来た時」です。
試合が終わったのは今から1時間前ではなく、「そこに来た時」から1時間前だ、ということになります。
少し紛らわしいかもしれませんが、以下のように図にするとわかりやすいでしょうか。
上の図において、矢印の先端である「Now」が、発話をしている今現在となっています。
そして「私がそこに着いた」のは、過去のある時点であり上の図の真ん中の点の辺りだとすると、「試合が終わった」のはそこから1時間前の、上の図で左側の点の辺りだということになります。
こういうときの「1時間前」を表現するには ago ではダメで、before を使います。
このように、日本語では同じ「~前」という表現ですが、英語だと別々の副詞が使われることに注意が必要です。
以上、本記事では「~前」という表現をするときに ago と before という単語がありますが、この2つがどのように違うのか、どのように使い分けられるのかをまとめました。